研究概要 |
コメ蛋白質はデンプン性胚乳に内在する2種類の顆粒(PB-【I】とPB-【II】)に局在し、両者は形態、蛋白質組成および人体への吸収性等において異なっている。したがって、コメ蛋白質の改良を目的として、この2種の蛋白質顆粒に関する遺伝変異の探索とその生化学的特性および遺伝・育種学的特性の解明を行い、以下の成果を得た。 1)変異体の選抜:九州大学農学部育種学教室に保有する国内外の品種およびMNUの受精卵処理により誘発した突然変異系統について、SDS-PAGEによって貯蔵蛋白質に関する変異体の選抜を行い、これまでに4種類63系統の変異体を得た。加えて、IEF,二次元電気泳動を用いることにより突然変異を詳細に分類できた。さらに酵素抗体法(ELISA)により、それぞれのポリペプチド種の量的差異に関する変異体を得た。 2)変異体の特性解明と選抜法の確立:PB-【I】とPB-【II】の完全単離に成功し、PB-【I】は10,13および16kDaのプロラミン、PB-【II】は22-23kDaと37-39kDaのグルテリンおよび26kDaのグロブリンから構成される。日本の代表品種ではPB-【I】とPB-【II】はほぼ1:3の比で含まれるが、PB-【II】含量の高い変異体を得た。電顕観察でPB-【II】量の増加した変異体とともに、PB-【I】やPB-【II】とは異なる蛋白顆粒を持った変異体や、形態の異なるPB-【I】を持つ変異体の存在を確認した。PB-【I】とPB-【II】の完全単離により、酵素抗体法による変異体選抜が可能となった。 3)遺伝子分析:遺伝様式および対立性検定の結果、CM21,CM1787(57-H)およびCM1675の変異ポリペプチドは、各々独立の単劣性遺伝子によって支配されていた。これらの遺伝子はそれぞれrsp-1(rice storage protein),rsp-2およびrsp-3と命名した。トリソミックス分析の結果、rsp-1は染色体10,rsp-2は染色体9に座乗していた。 4)農業特性:原品種との戻し交雑【F_2】,【F_3】集団内に、変異遺伝子を持ち原品種に近い草型を有する個体がみられた。
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