配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1986年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1985年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1984年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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研究概要 |
水産生物の遺伝学的研究は1950年代後半から免疫遺伝学的方法で、1960年代以降アイソザイム分析で急速に進んだ。アイソザイム分析の酵素化学,発生学,生理学,進化学,集的研究への功献は厖大であるが水産生物資源の単位である集団はアイザイム分析で充分明らかにできるとはかぎらず、さらに新しい遺伝的標識を加える必要があった。この研究では核DNAより変異性が大きく、分子量が小でとり出しも容易と考えられ、またヒトなどで急速に知見が集積したミトコンドリヤDNA(mtDNA)の塩基配列を研究し、個体や集団の遺伝的標識としての有用性と研究法の定法を定めたいと考えた。 その結果、水産生物ではイルカなど哺乳類をのぞくと魚類など脊椎動物でもミトコンドリヤが攘れやすく、ミトコンドリヤ・ペレツトのDNase処理でmtDNAが分解されることが明らかになり、SDS処理後塩濃度によって核DNAを結合しているたん白質とともに沈澱除去すること、さらにミトコンドリヤが多い肝臓のような組織が充分なかったり、凍結材料などではサザンブロツトハイブリダイゼーションなどによって明瞭な切断像が得られることを明らかにした。 イルカ,サケ科魚類,ウグイ,カキなどについて集団規模でmtDNAを分離し、切断像を分析しつつあるが、もっとも研究を蓄積したウグイでは下記の知見が得られた。(1)mtDNAはヒトなどと同じ1.6万塩基対をもち、(2)6塩基認識の10酵素で切断すると、そのうち8酵素に2〜4種類の切断型があり、(3)個体ごとに整理すると7つ以上のゲノムがあって、(4)集団はそれぞれいくつかの独立のゲノムをもった個体をふくみ、(5)後藤らによるsequence divergenceは集団間で1%以上と分化がきわめて大きかった。従って、mtDNAの制限酵素による分析は方法的にも、また分化の程度からも新しい有用な遺伝的標識として使える見通しが出来た。
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