研究概要 |
本年度はHTX系先天性水頭症雄性ラットを用いて約60ケ所における局所脳循環測定を行った。(方法)【^(14)C】-ヨードアンチピリンを100μci/kg持続静脉内投与を1分間行ない動物を断頭した。動物は(1)水頭症群:4週令水頭症ラット(2)シャント術施行群:4週令にV-Pシャント施行され更に7-10日経過した水頭症ラット (3)正常群:4-5週令で正常(非水頭症)ラット(結果)大脳皮質で水頭症により皮質が最も薄くなった視覚領での平均血流量は、正常,水頭症,シャント群で各々119,33,46ml/100g/minで水頭症での72%低下はシャントにても改善しなかった。皮質の厚さが比較的保たれた前頭葉でも水頭症で34%の低下を、シャント後にはやや改善したものの25%の低下を示した。このように大脳皮質では水頭症による高度な血流量低下はシャントにても改善せず非可逆的障害を示した。視床では水頭症で40%の低下を示したが、シャント後は17%低下にまで改善した。しかし内・外膝状体では水頭症で30%の低下を示しシャント後も改善しなかった。基底核,視床下部,辺縁系では水頭症にて10-20%の低下を示しシャントにより正常値にもどった。脳幹部では10%以下の血流量の低下を示しこれは正常範囲内と考えられシャント後には全く正常値を示した。しかし中心灰白質では水頭症で48%と低下を示しシャント後には正常値にもどった。この部は組識学的に脳室上衣下浮腫を水頭症で認め、これはシャント後に消失していた。小脳での血流障害は認められなかった。白質での血流量の低下は高度で50-60%の低下を示しシャント後も軽度の改善にとどまった。白質では著明な髄液浮腫,のう腫を認め白質損傷は非可逆的であった。(結論)1)水頭症における脳循環障害は大脳皮質で高度で非可逆的であった。2)間脳,脳幹部は軽度の低下を示し可逆的障害であった。3)脳組織内髄液浮腫は高度な循環障害を引き起こし、これを放置すると非可逆的障害に移行する。
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