研究概要 |
最終年度に当る61年度に於いては、1)質量数が20から40までの原子核を対象としてEp=35Mevの(p,n)反応についての精度の良いデータを蓄積し、更に理論的な解析を行い成果をあげ、2)【O^+】→【O^-】型遷移の研究を【(1/2)^+】→【(1/2)^-】や【1^+】→【1^-】遷移にまで拡張して新しい原子核の励起様式を研究する目的で本報告書にかかる研究を行った。 まず【^(22)Ne】,【^(30)Si】並びに【^(34)S】の中性子数が陽子のそれより2個多いN=Z+2核を標的とした(p,n)反応の実験を行いデータを蓄積した。これらの反応は余った中性子が2個もあるので反応断面積が大である一方、励起準位の数が増える。ここで本研究において完成した高分解能測定の装置並びに技術が威力を発揮し、良好な結果を得ることができた。特に【^(34)S】(p,n)【^(34)Cl】反応による実験結果をミシガン州立大学のAlex Bvown博士等の波動関数を使って解析したところきわめて合理的な一致を得ることができた。このBrown-Wildenthalの波動関数は現在宇宙における核合成などの計算に使用されているものであり、その検証が待たれていたものである。今回の我々のデータはこの点重要な貢献をしたこととなり、Brown博士も共著者の一人として成果をまとめた。(文献5参照) (p,n)反応による【O^+】→【O^-】遷移は核内における中間子のふるまいを探り、原子核の新しい励起様式をみるよいプローブとされてきたが、観測可能な例が【^(16)O】(p,n)【^(16)F】や【^(14)C】(p,n)【^(14)N】などきわめて少なく、より系統的な研究をするため、他の可能性が求められていた。本研究においては【(1/2)^+】→【(1/2)¨-】遷移に△【J^π】=【1^-】とともに含まれる△【J^π】=【O^-】に着目し、また【1^+】→【1^-】遷移も含めて研究した。結果は見事に△【J^π】=【O^-】遷移の観測に成功し、まず第一歩として【O^+】→【O^-】に含まれる中間子交換のテンソルカの検証としてまとめPnysicsLettensに近く公表の予定である。(文献3)
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