研究概要 |
シダ植物の配偶体における多様性を明らかにし、シダ植物の系統研究において、配偶体の形態や胚発生様式がどのように位置づけられるかを検討することを目的とし、特に、マツバラン属,ヒカゲノカズラ属,ハナワラビ属について、その塊状・菌根性の配偶体の外部形態と内部形態の観察を行い、その胚発生における胚柄の有無、器官形成の様式などに関する比較形態学的な検討を行った。 塊状・菌根性の配偶体は、その大部分が地中生で培養が困難なものが多く、多種、多量の材料を得ることが難しく、計画年度内にその目的が充分に達成できなかった部分もあるが、日本産のシダ植物の中でこのような配偶体のみられる分類群であるマツバラン科,ヒカゲノカズラ科,ハナヤスリ科の3群について、それぞれ1種類であるが、マツバラン,ヒカゲノカズラ,ヤマハナワラビの配偶体の採集、観察に成功し、その外部形態や内部形態について、多くの知見を加えることができた。 また、このような塊状・菌根性の配偶体についての主要な研究は1800年代後半から1900年代の始めになされており、その後断片的な報告が加えられているものの、その全体をまとめた研究は少い。本研究では、今後の研究のための基礎資料として、特に、ヒカゲノカズラ属とハナヤスリ科について、これまでの研究記録を整理して配偶体のタイプ別にまとめた図表を作成した他に、塊状・菌根性の配偶体に関する研究の歴史と研究内容のまとめを行った。 なお、マツバランにおける配偶体と胞子体地下部の類似性や両者にみられる無性芽の問題、ヒカゲノカズラの配偶体にみられる多様性の由来、ヤマハナワラビの胚柄の形質評価、胚発生の細部の違いについての検討など、まだ未解決の問題が多く、さらに詳細な研究が必要である。
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