研究概要 |
新規に供給される分譲集合住宅の水準が向上するにつれ、ストックは相対的に低水準化する。近年になって、昭和40年代に供給された分譲集合住宅の一部で中古価格が著しく低下してきた。価格変動要因として、住宅需給構造周辺部の開発状況,建物の維持管理の状況を挙げ、各種の分析を試みたが、この中で、低価格化に最も寄与している要因は、住宅需給構造の変化であることが判明した。小規模な住宅程、交通不便な場所に立地している住宅程、中古住宅需要を失いつつあることが判明した。中古価格は更地にした場合の土地価格を大巾に下廻る場合も多く、昭和30年代団地で1/2〜1/3 戦前に供給された住宅で1/3〜1/6になっている。これは分譲集合住宅の場合、区分所有であるから、建替困難となり、従って土地の効用が将来にわたって制限し続けられるためと判明した。中古価格が更地価格以下となる現象を"地価割れ"と名付けた。低価格化は居住者〓〓の低下を促し、管理を進める上で様々な障害を抱え込むことも判明した。居住者の経済的条件が悪化し、適正な管理費支出が困難となるばかりでなく、管理費・修繕積立金の長期未納者も増加している。管理意識の低下もみられ、スラム化が極めて懸念される。スラム化を防止し、資産を保全するとともに快的な居住水準を確保するために、共同増築を進めることが考えられる。またスラム化著しい住宅では建替も検討されなければならない。本研究では両者の可能性を投資効果の観点や土地経済の観点から検討し、事業推進の経済評価を行なった。多くの団地で可能性をみたが、一方、住民意識は多様であり、経済指標のみでは対策困難なことが判明した。改善実施団地 建替実施団地の事業記録を収集することで、多くの知見を得たが、住民の合意を得る上で、コーディネーターが豊富な知識技術を持つことが急がれるほかに、今後行政の役割も緊急に検討されなければならないことが判明した。
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