研究概要 |
本研究は窒素原子を含む生物活性化合物,特に各種アルカロイドの合成に一般的に活用される有用なキラル合成単位(アミノキラルシントン)の開発を目的とする。このアミノキラルシントンに要求される構造的な特徴は窒素原子に隣接する不斉炭素原子が存在することである。そこでこの条件に最も適合する原料資源として光学活性アミノ酸を設定し、その新しい官能基変換法を開発することにより従来入手困難とされていたアミノキラルシントンの創製を実現しようとした。光学活性アミノ酸に有機合成的な加工をする際その光学中心とアミノ基を保存することを前提とするならば,その手法は基本的にはカルボキシル基の官能基変換を手掛かりとすることに限定される。即ちアミノ酸を還元反応によってアミノアルコールあるいはアミノアルデヒドに変換し,それらを更にどのような合成中間体に導くかが重要なポイントとなる。筆者らは(1)アミノアルコールから環状イミダ-トへの変換とイミダトニウムイオンの新規な求核的開環反応、および(2)アミノアルデヒドからアリルアミンあるいは4-アミノアリルアルコールへのラセミ化を回避出来る合成変換法の開発に着目した。鋭意検討の結果(1)についてはイミダトニウムイオンと有効にかつ選択的に反応する種々の求核反応剤を見い出し,非縮合的なアミド合成法を確立することに成功した。(2)については塩基性の弱い有機金属化合物を用いるアミノアルデヒドのラセミ化を伴わないオレフィン化の条件を見い出すと共に,アミノアルデヒドから誘導される不飽和エステルの1,2-還元法を開発し4-アミノアリルアルコールの合成法を確立した。これらのアミノキラルシントンは数種の天然アルカロイドを含む含窒素化合物の合成によってその有用性を検証し,併せて本課題に関する今後の研究の継続が意義深いことを確認した。
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