研究概要 |
ネコ下位離断脳の大脳皮質運動野から細胞内電位を記録し、皮質リズム波の形成に関与する3種類の入力刺激によって生ずるニューロン活動の拡延パターンを調べた。皮質表面刺激に対するニューロン反応は表層ニューロンの興奮に始まり、垂直および水平方向の軸索に沿って皮質内に拡延し、シナプスを経由するごとにニューロン反応が複雑化し、間接的な興奮,抑制,脱促通および脱抑制を生ずる。これらのニューロン反応は、それぞれのニューロンが脳波覚醒の初期に示す反応とほぼ一致し、表層ニューロンから始まるカスケード型シナプス伝達径路が覚醒初期に使われていることが明らかとなった。大脳脚の電気刺激にたいする比較的短潜時のシナプス性電位反応は、(a)興奮性シナプス電位のみ、(b)抑制性シナプス電位のみ、(C)両者混合、(d)無反応の4型に分類することがができた。反応が観察されるのは主に皮質3層下半部と5-6層のニューロンであり、それより浅層のニューロンは殆どが無反応であった。反応潜時は興奮,抑制のいずれも皮質最深層のニューロンでもっとも短く、より浅層のニューロンで延長する傾向を示した。視床腹外側核の電気刺激に対するニューロン反応は、興奮とそれに続く抑制、またはそのいずれかから成り、興奮と抑制の潜時はいずれも皮質中層(3層下半部と5層)でもっとも短かく表層と深層へ向って延長する傾向を示した。皮質表面刺激と視床刺激の効果を比べると、潜時は異なっても反応型が共通する集束例が多くみられ、情報処理系としての皮質ニューロン回路の複合性が示唆された。一方、大脳脚刺激と反応型が共通する例は比較的少なく、錐体路細胞の反回性軸索側枝が特殊な入力経路を形成することが示唆された。その他、紡錘群発波にかんする研究の第一歩として、自発性に生ずる紡錘波と視床核や皮質表面の刺激によって誘発される紡錘波との形状の比較を行なった。
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