研究概要 |
1.抗生剤関連性下痢症とC.difficile毒素 手術を受けた11名の患者について、抗生剤投与前後の糞便内のC.difficileの菌数および腸管毒素量の変動と下痢との関連性を検討した。11名中4名では抗生剤投与開始後4〜7日目までの糞便からC.difficileが【10^4】-【10^7】cfu/gとC.difficile毒素の1500〜6500ng/mlが検出された。糞便内のC.difficileの菌数とC.difficile毒素量とはよく相関し、C.difficileの菌数の増加により毒素量の増量が下痢発症の原因となることが示唆された。 2.C.difficileの院内感染の解析 新生児のC.difficile腸炎が多発する病院と発症例の少ない2ツの病院を対象として検討した。多発する病院では新生児室の床,スリッパ,処置台,汚物入れ,便器,便所などから,毒素原性C.difficileが高率に検出されたが、発症例の少ない病院では検出されなかった。患者由来株と病院環境由来について各種生化学的性状や遺伝学的性状を解析すると、これらの菌株は同一クローンによることが強く示唆された。 3.C.difficile腸炎患者および健康者糞便中の細菌叢の変動。 各種抗生剤投与と関連して発症したC.difficile腸炎患者とよび抗生剤投与を受けた健康なボランティアの糞便内細菌叢を比較した。糞便内のEnterococcusfaecalisの減少がC.difficileの増加に密接に関することが示唆された。 4.抗生剤関連性の下痢にC.difficile以外の嫌気性菌の関与 抗生剤性の下痢でC.difficile以外の嫌気性菌の関与の有無について検討した結果、腸管毒素産生性のC.perfringens typeAが関与する成績を得た。 5.C.difficileの腸管毒素による家兎小腸粘膜組織の変化 毒素により小腸粘膜の繊毛上皮細胞の剥離,脱落,変性の所見がみとめられた。
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