研究概要 |
in vitro培養系で豚表皮をglucocorticoid処理することにより表皮のβ-adrenergic adenylate cyclaseの反応の増強効果が認められた。この作用はglucocorticoid一般に認められ、またpolencyの強いステロイド程低濃度で認められた。この作用は蛋白合成阻害剤であるactinomycinDやcycloheximideで抑制されるが、同時に蛋白合成阻害剤はある一定の濃度領域でβ-adrenergic増強作用を示すことから、この所見はステロイドによって誘導される蛋白合成系で認められるいわゆるparadoxical作用として解釈された。この過程でわれわれは、glucocorticoid以外にもβ-adrenergic adenylate cyclase系の増強作用を示す薬剤を数多く見出し相互の関係を検討した。その結果ステロイドの他に(1)colchicineを含むmicrotubule系を破壊する薬剤,(2)ビタミンA酸誘導体(いわゆるレチノイド)にもそれぞれ独立にβ-augmentation作用があることを見出した。これらの薬剤処理は組合せると相加的であり増巾機構相互の独立性を更に強く示している。興味あることに表皮細胞増殖の亢進している尋常性乾癬においてはβ-adrenergic adenylate cyclaseの反応性の低下が認められており、その病因との関連が推測されている。ステロイド,colchicine,レチノイドはいづれも尋常性乾癬に対して治療効果を有する薬剤でありこれらの薬剤がβ-adrenergic adenylate cyclase系の反応性を上昇させたことは興味深い。そこでわれわれは次に尋常性乾癬に治療効果を有する薬剤をβ-augmentationの立場から検討した。一般にthymidineの取り込を抑制させる薬剤ではin vitro培養系でβ-adrenergic増強効果が認められたがその程度はthymidineの取り込の抑制の程度とは必ずしも相関しなかった。 以上表皮adenylate cyclase系の活性はわれわれの研究により数多くのメカニズムにより調整されていることが判明した。
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