研究課題
一般研究(C)
正常肝および実験肝癌に対する放射線照射の影響および効果を検討し、安全に臨床応用可能することを目的とした。マウス肝癌MH129-Pのγ線照射による50%腫瘍コントロール線量は、53Gyであった。これは放射線感受性のある実験腫瘍EMF6と放射線抵抗性のNFS0の中間にあたり、肝癌に対し放射線療法が有効であることがしめされた。正常肝に対する影響をRESの機能の推移について家兎で検討すると、照射によりRES機能は徐々に低下し4週目で最低値となり、それ以後回復傾向をしめした。肝浮腫の程度をマウス肝照射後摘出肝重量と乾燥後肝重量の比により検討したところ、重量比は4週目6週目では対象時に比して有意に低下したが6週以後回復する傾向がみられた。また正常肝に対する放射線照射による病理組織学的変化を、経時的に線量別に検討した。15Gyマウス肝全肝照射では、2週目までは著変なく4週目より二核細胞や不規則な核の出現、核小体の増加と大小不同がみられた。週を経るに従い組織学的変化は進行し、24週ではfocalなnecrosisやfibrosisがみられた。50Gy照射では5日目では異常ないが2週目で細胞浸潤、肝細胞核の大小不同がみられ、4週目でびまん性出血およびnecrosisが散在性にみられ、8週以内で全例死亡した。以上の結果から放射線療法は肝癌に対して有効であるが、有効量で全肝照射すると正常肝の広範な出血necrosisのためマウスは全例死亡したので危険であると思われた。照射野をしぼり正常肝の含まれる範囲を最小限にすることにより安全に臨床応用できることがしめされた。照射された肝は、浮腫、RESの機能低下は4週で最底値となるので、術前照射として応用する際は、照射後4週たってから肝機能検査を行い、切除範囲や手術適応の決定をすべきと思われた。
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