研究概要 |
1.種々の外科的病態下における肝での糖産生(糖新生): 1).膵全摘術後早期の変化;膵全摘術後インスリン投与下に管理した雑種成犬(I(+)群)とインスリン非投与の群(I(-)群)との間で【6^(-3)】H-ブドウ糖を用いた Primed-Constant Infusion法で肝での内因性糖産生速度(Ra)を求めると同時に血漿アミノグラムの変動について比較した。Ra,アミノグラムが外因性グルカゴン投与によって両群でどの様な影響を受けるかについても検討した。I(-)群ではRaの増加と著しい高血症がもたらされるが、I(+)群ではRa,血糖値ともに対照の脾摘後犬と同程度に抑制されていた。Ra,血糖値のいかんに拘らず両群で糖原性アミノ酸値の上昇を中心とした高アミノ酸血症が認められたが、外因性のグルカゴン投与でアミノグラムの正常化が認められた。この際I(+)群で血糖値とRaの増大が著しく、I(-)群での両指標の変化は僅かであった。2).70%肝切除術後早期の変化;残存肝の単位重量当りのブドウ糖産生量が著しく増大することにより末梢での糖需要を満していることが明らかとなった。この際、脂肪酸からのケトン体産生率の低下を伴っていることも明らかとなり興味深い。3).エンドトキシン血症時の変化;大腸菌Lipopolysacchuvide(エンドトキシン)LD100投与後循環系はhypodynamic stateとなるが代謝系は酸素消費量不変状態(normometabohic state)であり、この際肝での糖産生速度(Ra),末梢での糖消費速度(Rd)の両者とも著しく亢進するが常にRd>Raであるため次第に低血糖に移行する。Rd増加はブドウ糖酸化の亢進による事が明らかとなった。 2.【^(14)C】-Carbonate法によるinvivoでの肝アルブミン合成の測定: 【^(14)C】-Carbonate,【^(125)I】-Albuminの2-tracer法により安静空腹時でもイヌの肝アルブミン合成量には個体差が著しいことが示された。各病態下での変動についての研究に先立ち更に方法の簡易化の目的で【^(125)I】-AlbuminにかわるEvans-Blueなどの色素の使用を検討中である。
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