研究概要 |
われわれは、卵巣悪性胚細胞性腫瘍の患者血清中に、マウスF9細胞に対する抗体を発見し、その抗原決定基が分化に伴ない減少するEmbryoglycanに存在する事実を報告して来た。本研究において、この坑原決定基のより詳細な解析を進めた。 (1)Sephacryl S300を用いたゲル濾過により、Embryoglycan(平均分子量約25万)中の分子量の大きい分画(7万以上)にその決定基が最も多く存在した。(2)この7万以上の分画には、Embryoglycan上に存在し、分化に伴ない変化するマーカーであるFBP,DBA,PNA,GS-1のレクチン結合基が見い出された。(3)F9細胞の培養上澄中にも、患者抗体が反応するEmbryoglycanが検出された。(4)正常ヒト血清中にある、α-galacToseを末端にもつ糖鎖に対する抗体(抗ウサギ赤血球抗体,抗B血液型抗体,抗【P_1】血液型抗体)とは異なることを、血球凝集反応,B型三糖による吸収実験により確認した。(5)Ehrlich腹水癌細胞上のα-galac Tose糖鎖がこの患者抗体とEmbryoglycanの反応を強く阻害する事実より、α-D-Galp-(1-3)-〔α-D-Galp-(1-6)〕-β-D-Galp-糖鎖と同一または極めて類似した糖鎖が抗原構造を担っていると判明した。 この研究と平行して、ヒト胚細胞性腫瘍の培養細胞株の細胞生物学的特性、インターフェロン感受性、ヌードマウス移植による分化能の検討を行なった。
|