研究概要 |
目的:一側ろう患者の聴覚,平衡覚の測定と日常生活及び学校生活におけるハンディキャップについての検討。 対象:1971年7月より1985年12月までに北里大学病院耳鼻咽喉科難聴外来に登録された一側ろう323名を対象とした。 方法:聴力検査として、純音聴力検査,語音聴力検査,チンパノグラム、音の方向感検査を施行した。平衡機能検査として、電気眼振図、温度眼振検査、50歩足踏み試験、飛行機型片足立ち検査を施行した。家庭及び学校に聴力、平衡覚に関するアンケート調査を行った。 結果:(1)健側聴力は正常範囲内であった。小学校低学年では浸出性中耳炎が問題であった。音の方向感は年と共によくなるとはいえなかった。(2)ENG検査で眼振を認められたものが22%、温度眼振検査で異常は79%であった。(3)日常生活にて難聴を自覚しない者が43%いた反面、学校生活で不便を感じる者が62%、日常生活で不便を感じる者が54%いた。また、めまいやフラツキがある者がそれぞれ38%、20%いた。(4)学校調査では9%が調査時難聴を把握されていなかった。方向感、平衡感について悪いと答えたのは5%、24%で患者の結果と異なった。 結論:聴力の検討から、就学期の学童においては浸出性中耳炎に注意すること、健側聴力と音の方向感の検討から、通常の教室程度の広さと静かさでは難聴耳側の端の列でやや後方の座席がもっともよいと思われた。方向感は首振りによる時間差で識別できた。平衡検査で異常が多かった割に日常生活でのハンディキャップは少なかった。しかし、このような事実は逆に、都合性難聴や都合性めまい、詐病として誤解も生じやすいので、周囲の一層の理解が必要と思われた。
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