研究概要 |
本研究の目的とするところは、実験眼球内および眼窩内腫瘍モデルのin-vivo核磁気共鳴画像(以下MRI)の解析により臨床MRIをより正確に読影することである。使用したNMR測定装置はBruker社製CXP20tbで、常伝導磁場0.477T、ガントリー口径8cmのものであり、実験動物は小型白色家兎を用いた。昭和59年度はMRI撮像のための至適パラメータを決定するための基礎的実験、ならびに三次元画像法の開発が主体となり、併せて正常家兎眼窩部のMRIの撮像も開始した。しかしながら解読に十分な画像が得られないためさらにパルス・シーケンスの改良を行ったところ、60年9月にはようやく家兎眼窩部の正常MRIを得ることができ、第39回日本臨床眼科学会・画像診断グループディスカッションにて報告した。Proton density(PD)および【T_2】の測定にはCPMG法を、【T_1】には変形したIR法を用い、multi-echo法にて収集したエコーをフーリェ変換して投影像を得、これを投影再構成法により画像化した。眼球内は前房,水晶体,硝子体,強膜が明瞭に描出され、眼窩内は視神経,外眼筋の一部,および眼窩脂肪が識別できた。前房水,硝子体は【T_1】,【T_2】ともに非常に長く、水晶体は両者ともに短かいことがわかった。また、眼窩内脂肪も短かい【T_1】,【T_2】を示し、このため外眼筋,視神経はいずれの像にても明かるい脂肪の中に低信号で黒く抜けてみえた。これらの結果は従来報告されている人眼の結果とよく一致する。昭和61年度はGd-DTPAの増強効果に関する検討を行った。正常家兎にGdを静脈内投与後1時間以内から6時間後まで【T_1】像を撮像した。その結果正常像においても投与後早期には全体に【T_1】の短縮がみとめられ、2時間以上経過するとその効果はほとんど消失することがわかった。特定の部位の選択的な増強効果はみとめられなかった。今後は現在作製中である実験的眼腫瘍モデルでこれらのデータを基にMRIの解析を続けていく予定である。
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