研究概要 |
1.喉頭筋MN(MN:運動神経細胞)。(1)上・下喉頭神経の起始細胞の局在をhorseradish peroxidaseによる逆行性標識法で調べた。上喉頭神経起始細胞は、疑核の吻側1/3で、小型神経細胞の密在する細胞群CoGと、その腹内方のやや大型散在性細胞よりなる細胞群SGmにみとめられる。一方、下喉頭神経起始細胞は、疑核の尾側2/3で、大型神経細胞の散在性細胞群DiGに存在する。(2)ウサギ喉頭筋を構成する輪状甲状筋,後輪状披裂筋,甲状披裂筋,および外側輪状披裂筋の各MNの局在をNuolear Yellowによる逆行性標識法で調べた。上喉頭神経支配の輪状甲状筋(声帯を緊張させる)のMNは、疑核吻側1/3のSGmに存在する。 一方、下喉頭神経支配の他3筋のMNは、疑核の尾側2/3でDiGに存在し、後輪状披裂筋(声門を開大),甲状披裂筋,外側輪状披裂筋(後2者は声門閉鎖筋)の順に吻尾方向に配列する。(3)副神経延髄根または迷走神経根の頭蓋腔内切断と、上記の逆行性細胞標識法を組み合わせることにより、各喉頭筋MNの軸索末梢経路を調べた。声帯緊張筋MNと声門開大筋MNの軸索は、迷走神経根から迷走神経本幹を経て、それぞれ上および下喉頭神経に達する。一方、声門閉鎖筋MNの軸索は、副神経延髄根から副神経内枝を経て迷走神経本幹に入り、ついで下喉頭神経に達する。すなわち、喉頭筋MNでは、支配筋の作用による差が、中枢局在のみならず軸索末梢経路にもみとめられることが明らかとなった。 2.咽頭筋MNの局在については、同じく逆行性細胞標識法を用いて研究を行い、疑核内で喉頭筋MNと異なる分布を示すこと、咽頭収縮筋MNと咽頭挙筋MNで局在域と軸索末梢経路の両方に差異のみとめられること等を明らかにし、いくつかの所見についてはすでに学会発表を行っている。今後さらに詳細を明らかにしていく予定である。
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