研究概要 |
saikosaponin c(sc)を人工胃液で処理すると異環共役二重結合を有するsaikosaponin h(sh)及び、同環二重結合を有するsaikosaponin i(si)が誘導された。そこで、これら三種のサポニンをマウス腸内細菌とともに培養すると、それぞれのアグリコンであるsaikogenin E.C.Bが単離された。しかし、部分加水分解物であるprosaikogenin類は収率が低く、単離,構造決定するには至らなかった。そこで、アグリコンのエーテル環を開裂させないアルカリ条件下での分解反応を検討した。若干の水を含有するスピクトル用ブタノールに金属ナトリウムを加え、これにscを溶解させ、80℃で、2〜4時間反応を行うと、糖鎖の部分的に切断されたprosaikogenin【E_1】(【PSE_1】:glc-glc-SE),【E_2】(【PSE_2】:rham-glc-SE),【E_3】(【PSE_3】;glc-SE)が収率よく得られた。さらに、これらprosaikogenin類を酸処理することにより、異環共役二重結合を有するprosaikogenin【C_1】,【C_2】,【C_3】及び同環共役二重結合を有するprosaikogenin【B_1】,【B_2】,【B_3】を単離した。なお、今回得られたprosaikogenin類は全て新物質であった。次に、昨年までに得られたsaikosaponina,dの消化管内代謝物15種と、今回得られたscの代謝産物15種について、下垂体一副腎系刺激作用を、内在性ステロイドホルモンであるコルチコステロンを指標に検討した。sasdの誘導体においては、真性アグリコン構造を有するsa,sdにのみ0.1〜0.4mmol/kgで活性が認められたがscの代謝産物では、代謝中間体と考えられるprosaikogenin【E_1】,【E_2】にのみ活性が認められた。このことはコルチコステロン分泌活性がエーテル環の有無、糖鎖構造の違いに由来する化合物の極性に支配されている可能性を示唆しており、saikosaponin体謝物の標的細胞における細胞膜とのinteractionの違いが、活性に影響を及ぼしていることが考えられる。
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