研究概要 |
キック動作を取上げ映画と筋電図を用いて1〜5歳の同一幼児11名が加齢に伴い習熟していく過程を5カ年間追跡するとともに幼児から成人に至る加齢的変遷を横断的に検討し、幼少児におけるキック動作の発達過程を明らかにした。さらに、技術水準の異なる成人を対象に、種々の速さのボールを蹴らせスイングスピードとボール速度を示標に両者の間に介在するキック動作が技術段階や習熟過程でどのように異なるかを筋作用機序の面から検討した。加えて、幼少児,成人580名について電気的装置を用いてボール速度を測定し、年齢別変化を捉えた。ボール速度は1歳児の1.8m/秒から成人の19.2m/秒(男子),13.2m/秒(女子)まで加齢的に増大し、男女いずれも13歳で成人の90%以上のレベルに達することが認められた。また、性差は5歳頃から出現し7歳以降で顕著になる傾向がみられた。成人熟練者では立脚着地後、股関節屈曲筋,僅かに遅れて膝関節伸展筋の放電が顕著にみられ、さらに足関節の伸展位での固定が認められた。しかし、若年者,未熟練者では積極的な膝関節の伸展,足首の固定は認められなかった。幼児の加齢による習熟過程、成人の練習過程において動作パターンは熟練者に近づく傾向が認められた。すなわち、男子では10歳以降で足関節の固定を除き成人と類似したパターンを示すようになった。これらのことからキック動作の習熟には学習の必要性が示唆され、学習の可能性はパントキックができるようになる6歳頃からで、適時性はバランス能力が成人レベルに達する9歳以降ボール速度が成人の域に達する13歳までの年齢に存在すると推定された。 技術水準の高い者ほどスイングスピードとボール速度の間の相関ならびに回帰係数は大きかった。また、スイングスピードの割にボール速度の低かった試技ではインパクト時の足関節の伸展位での固定,膝伸展筋あるいは股関節屈曲筋の緊張に欠如がみられた。
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