研究概要 |
補体第2経路は抗体の関与なしに異種細胞を攻撃し、抗体系免疫機構とは異なった免疫機構と考えられる。ところが本経路が具体的にどのように異種細胞を識別しているかについては不明な点が多い。本研究では、ヒト補体第2経路がウサギ赤血球を溶血し、逆にウサギ第2経路はヒト赤血球を溶血する現象に着目した。この場合第2経路が同種の赤血球を溶血しないことは自明の事実である。すなわち、両種第2経路構成全因子(C3,B,D,H,IおよびP)を精製し、再構成溶血反応系を確立し、その上で一部の因子を異種の対応する因子で置換したとき、溶血活性がどのように変化をするか調べればよい。もしも異種細胞の識別に関与する因子が置換された場合、異種赤血球への溶血活性が消失すると考えられる。この方法を用いてC3が識別の主役であること。Hは同種C3との親和性が高いこと。B,D,IおよびPはヒト因子でもウサギ因子を用いても溶血活性に差がないことから、識別機構には関与しないことなどを見出した。残念ながら上記の結論はヒト系にウサギ因子を置換する方法でのみ得られた。ウサギ再構成系によるヒト赤血球の溶血は弱く、また再現性も低く、今後の検討課題として残った。 赤血球側にも第2経路を識別する物質がなければ、今までの議論は成立しない。その第一候補として、最近発見されたDAFに注目した。DAFは含量が低く、またグリコホリンとの分離が困難であったので、本研究ではあらかじめトリプシン処理しグリコホリンを分解した赤血球膜から、DAFを簡便に単離する方法を開発した。そして初めて部分アミノ酸配列などを決定できた。DAFは同種C3に対する親和性が高いので、識別過程に関与する可能性が高い。しかしDAFだけでは説明できないと思われるので、さらに他の赤血球膜物質も考えねばならず、現在検討を進めている。
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