研究概要 |
記録密度を飛躍的に増大できる垂直磁気記録方式が提案され、注目を集めているが、この実現の可否は、記録・再生特性のよい媒体が再現性よく安価に生産できるかどうかにかかっている。本研究では、我々が開発した強磁性材料の膜でも高速形成が可能な対向ターゲット式スパッタ法をさらに改善して緻密で均質であり強靭なCo-Cr垂直磁化膜を得た。膜堆積速度は従来より100倍以上高い1μm/分以上で、ターゲットの使用効率が高く、大面積にわたって均一な膜が形成できるようにした。さらにAr圧力が【10^(-4)】Torrの高真空中でもグロー放電を維持するとともに【10^4】rpmの高い速度で基板を回転できるようにした。この装置を利用して、2〜4in径のリジットディスク基板上へのCo-Cr系合金の垂直磁気記録媒体の形成条件を詳しく調べ、基板表面の状態,基板温度,膜形成速度,雰囲気ガス圧,基板回転速度,マスク形状などの膜形成条件と膜の構造・磁気的性質との関連性を明らかにし、優れた媒体が再現性よく作製できる技術を確立した。下地軟磁性層としてパーマロイ,Co-To-Zr,純鉄など膜を用い、それらの厚さ、飽和磁化,保磁力,異方性定数に対する記録特性の依存性を調べ、最適の値を明らかにした。耐摩耗性,加圧・加熱減磁を調べトップコート用材料としてC,a-sic,TiNが適しており、減磁の少ない媒体材料としてCo-Cr系に適量のTa,Zr,Nbなどを添加した合金膜を開発した。一方、対向ターゲット式スパッタ法ではターゲット間にプラズマがほぼ封じ込められるので、三組ターゲット対を近接させても独立にスパッタが行なえるようにし、三層連続堆積可能な装置を設計・製作し、上述のような本研究で開発した下地軟磁性層、垂直磁気記録層およびトップコートを連続形成し、200KBPIを越える超高密度でも良好な記録、再生特性を実現した。
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