研究概要 |
本研究は、磁気アクチュエータおよびセンサに適したサマリウムなどの希土類元素とコバルトを主な組成とする合金薄帯を超急冷法を用いて試作・開発することを目的としたもので、次のような成果・知見が得られた。 1. 幅5mm以上、長さ10m以上の連続薄帯を作成することを目標に、作製条件(作製ガス雰囲気,溶解射出用のノズルの形状、射出圧,ロールの材質、ロール速度等)を種々検討し試作した結果、長さについては目標値を越えることができた。しかし、連続長尺薄帯では5mm幅を越える広幅の薄帯の作製には至らなかった。この原因は、原料の希土類元素と石英ノズルとの反応が極めて激しく、溶解量を増加させた場合の有効な反応防止方法が得られなかったためである。 2. プラセオジウム・コバルト系(Pr-Co)薄帯を作製し磁気特性を調べた結果、つぎのような成果をあげた。 (1)Pr【Co_5】単相の17.3at%Pr-Co薄帯で、従来の粉末冶金法によるPr【Co_5】焼結磁石の2倍以上の10〜12(kOe)の高保磁力が得られることを見出した。 (2)超急冷法で作製したPr-Co薄帯の含有酸素量は、300〜500(ppm)で従来のPr【Co_5】焼結磁石の1/10〜1/20の低い値で、磁気的・化学的に長時間安定であることを明らかにした。 3. 上述のように薄帯の広幅化には未解決の問題を残したが、プラセオジウム(Pr)の高性能 磁石材料としての利用の可能性を明らかにした。すなわち、Pr【Co_5】は理論的にはSm【Co_5】よりも高い磁石性能が期待され、さらに資源的に豊富であるにもかかわらず、従来の粉末冶金法では4〜5kOeの低い保磁力にとどまっていたが、本研究の超急冷法では10〜12kOeの高保磁力が得られることを明らかにした。これは希土類高性能磁石の可能性をさらに拡げる成果である。
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