研究概要 |
細胞と電極の直接反応に着目し、ボルタメトリー法を用いた電気化学的細胞検出システムを創案した。このシステムは検出電極にB.P.G.(熱分解黒鉛)電極を用い、サイクリックボルタメトリーにより得られるピーク電位,電流,波形を指標として、微生物や動物細胞の分類、固定や細胞数の測定を行うものである。種々の微生物に対しこのシステムを適用し、以下の知見が得られた。細胞-電極間の電子移動反応は細胞の細胞壁中に存在する補酵素Aによって媒介されており、細胞壁構造に密接に関係している。また、4.4´-ビピリジルでB.P.G.電極表面を修飾することで得られるピーク電流値は1.5〜2倍に増加し、4.4´-ビピリジルに電子移動反応を促進する働きがあることが示された。腸内細菌の検出を行ったところ、グラム陽性菌は0.65〜0.69V(vsSCE),グラム陰性菌は0.70〜0.74V(vsSCE)のピーク電位を示した。また、グラム陽性菌とグラム陰性菌において1次波のピーク電流値に対する2次波のピーク電流値の割合は異なり、ピーク電位および1次波ピーク電流値に対する2次波ピーク電流値の割合で両者を識別できることが明らかとなった。抗生物資添加培地中で1時間放置後の菌体のサイクリックボルタグラムを求めると、ピーク電流値は抗生物質感受性菌で減少または一定であるのに対し、耐性菌は増加することで、抗生物質感受性菌と耐性菌の識別は可能であった。さらに、培地を加え、3時間培養することでこのシステムによって、感染尿の検出や原因菌の菌数,薬剤感受性まで指定できた。動物細胞であるT細胞,B細胞,マクロファージ,ガン細胞についても、このシステムで検出できた。また、抗原-抗体反応とこのシステムを組み合わせることで、属や種レベル(抗原性)での識別が可能であった。以上の結果、ボルタメトリー法を用いる電気化学的細胞検出システムは細胞の検出や識別、さらに菌数の測定に有効であることがわかった。
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