研究概要 |
1.稲いもち病菌発芽抑制物質の合成……米を主食とする我が国にとって稲いもち病の防除は重要な課題の一つである。本研究では、59年度に稲いもち病菌発芽抑制物質であるジモルフェコリン酸のメチルエステル【1!〜】、およびその類縁体【2!〜】,【3!〜】の簡便な合成法を開発することができた。60年度は入手容易なオレイン酸を出発物質に用いてコリオリン酸t-ブチル(【4!〜】)および化合物【5!〜】の合成を行った。民官企業に依託してこれらの化合物のいもち病菌に対する活性を調べたところ、いずれも活性を示さなかった。活性の発現にはエステルを加水分解してカルボン酸にすることが必要と思われる。 2.白あり道しるべフェロモン〔(3Z,6Z,8E)-3,6,8-ドデカトリエン-1-オール〕は合成できなかったものの、その研究途上において2,4-ジエン酸エステルをベンゼン中、二酸化セレンで酸化すると、一挙にフランおよびセレノフェン誘導体が得られる新反応を見い出した。このような温和な条件下でのジエンからのフランの合成例は今までに報告されておらず、学問的に極めて興味深い。 3.オクタデカポリエンカルボン酸の合成……上記(1)で合成した【1!〜】〜【5!〜】の化合物についてショウジョウバエに対する殺虫試験を行なったところ、弱い殺虫性を示したのみで、殺虫剤として実用に供されるほどのものは得られなかった。
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