研究概要 |
膜電位とそれに共役した現象を光学的に同時記録する方法を検討し、そのための測定装置の開発を試みた。膜電位およびそれと連関した現象に由来する光学的シグナルはダイクロイックミラーによって分割する方法を採用した。測定装置はダイクロイックミラーを利用した落射型螢光顕微鏡を用いて作製した。これは、落射型顕微鏡の通常の方法を逆用したものであり、膜電位感受性色素と他のプローブ(あるいは膜電位感受性色素のみ)で染色した被検標本を照射し、標本からの透過光(吸光)威齢乱光,螢光をダイクロイックミラーで波長に応じて二つの方向に分割し、それらを各々の方向で検出するように設計されている。なお、所定波長の選択には干渉フィルターを用いた。ダイクロイックミラーにより分割された2方向からの光学的シグナルの検出器としては光電子増倍管およびフォトダイオードを用いている。フォトダイオードは、Type509 Optical DetectorsとMatrix Array Type MD-25,MD-100を用いた。さらに光源にはハロゲンタングステン・ランプ(JC24V-300W)を用いて、よい結果が得られた。検出器に発生する信号電法は、電流-電圧変換回路(【I】-【V】コンバータ)によって、低インピーダンスの電圧信号に変換され、さらにアンプリファイアーで増幅されて、オシロスコープあるいは多チャンネルレコーディングシステムに記録されるように作製した。この装置を用いて、まず、膜電位感受性色素で染色した蛙の心房筋の自発性の活動電位(興奮)とそれに共役した収縮の測定を試みた。この2波長同時測光による記録でシグナルの時間経過を比較することによって、活動電位と収縮過程を分離して解析することができるようになった。この他、いろいろな膜電位連関現象の測定と検討をわれわれは続けているが、この方法は、細胞生物学,細胞生理学の領域で新しい強力な測定法になり得るものと考えられる。
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