研究概要 |
研究目的:アラキドン酸から作られるロイコトリエンは、アナフィラキシー反応に際して細胞から遊離される生理活性物質である。ある種のものは白血球の機能を活性化し、また別の型のものは血管透過性亢進・気管支収縮・腸管収縮などの生理活性を有し、アナフィラキシーの化学伝達物質と考えられている。このようなロイコトリエンの合成は、5-リポキシゲナーゼという酵素がアラキドン酸に作用することから始まるので、この酵素を阻害してロイコトリエンの合成を抑制すると、気管支喘息のようなアナフィラキシーを病因とする疾患の治療や予防に役立つものと思われる。本研究計画では、5-リポキシゲナーゼの特異的阻害剤を探索し、阻害能と特異性にすぐれた誘導体を開発し、in vitroならびにin vivoの効果を検討することを、目的とする。 研究成果:バイカレインやケルセチンのようなフラボン化合物が、アナフィラキシーによる気管支喘息モデルのウサギの気道抵抗増大を防止するという古い知見を基に、天然物のフラボン化合物を数多くスクリーニングした結果、サーシリオール(3′,4′,5-トリヒドロキシ-6,7-ジメトキシフラボン)が、強力に5-リポキシゲナーゼを阻害することを見出した(【IC_(50)】=0.1μM)。12-リポキシゲナーゼの阻害効果は揺かに低く、シクロオキシゲナーゼはほとんど影響されなかった。感作モルモット肺のフラグメントによるin vitroのロイコトリエン生成も、サーシリオールによって抑制された。より強力な特異性のある類縁体を見つけるために、種々の構造誘導体を合成してその阻害活性をスクリーニングした。フラボンのA環の5位または6位に種々の鎖長のアルキルオキシ基をつけたものの5-リポキシゲナーゼ阻害を調べたところ、炭素数5-10のもので最も阻害能が強く、【IC_(50)】は10nMの桁であった。実際に使い易い水溶性のものを作ること、また、in vivoの効果を検討することについて研究を進めている。
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