研究概要 |
単一(均一)なホルモンを産生し、in vitroで増殖可能なhybridsを細胞融合法によって樹立することを試みた。細胞融合はpolyethylen glycol1,000で行い、ホルモンの検出はケイ光抗体法(FA),radioimmunoassay(RIA)及びenzyme linked immunosorbent assay(ELISA)で行った。1)ラットインスリノーマ細胞(cl5F:インスリン産生)とマウス線維芽細胞(Lm【TK^-】)間のhybridsはインスリンを産生しなかった。2)ラット下垂体腫瘍細胞(GH3:成長ホルモン産生)とLm【TK^-】間のhybridsは成長ホルモンを産生しなかった。3)Cl5F間のhybridsはインスリンを産生した。4)GH3間のhybridsは成長ホルモンを産生した。以上の結果から細胞の組み合わせが適切であればホルモン産生細胞の樹立が可能と考えられる。次にラット胎児初代培養膵細胞とLm【TK^-】とを融合し275株を得た。これらの大部分はインスリン,グルカゴン,ソマトスタチンのいずれをも産生しないか、あるいは継代の途中で産生能を失なった。しかし、数コのhybridsはソマトスタチンあるいはグルカゴン様物質を産生した(FAによる)。更にソマトスタチンについて検討したところ、RIAでは培養上清及び細胞抽出液中に不検出であった。FAとRIAとの結果の違いを検討するため、FAに用いた抗ソマトスタチン抗体を2種類の抗原を用いた吸収試験によって検討した。その結果、hybridsがソマトスタチン様物質を産生することが支持された。なぜRIAでソマトスタチンを検知できないかは現在不明であるが、RIAに用いた抗ソマトスタチン抗体がhybridsの持つソマトスタチン様物質の抗原決定基を認識できない可能性がある。
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