研究概要 |
塩基性薬物の体内動態が個体間や個体内で大きく変動する一原因として、血中【α_1】-AG濃度の変動が考えられる。従って【α_1】-AG濃度の変動を的確に把握し、【α_1】-AGの結合体としての性質を知ることは、塩基性薬物の体内動態を予測し、適切な投与計画を立てる上で重要である。しかし今日まで充分な研究が行われていない。私たちはこのために次に示すような研究を行なった。(a)けい光色素オーラミンO(AO)を用いた【α_1】-AGの簡易定量法の確立と応用。 (b)塩基性薬物の血清蛋白結合における【α_1】-AGの寄与を簡単に求める方法の確立。 (c)内因性物質ステロイドホルモンと塩基性薬物の【α_1】-AG上結合部位の関係。 (d)ラット,犬,人間における【α_1】-AGと塩基性薬物の血清蛋白結合の種差。 (e)ラットにおけるPhenobarbital処理による【α_1】-AG濃度の変動。 (f)異なる【α_1】-AG濃度を持つラット間におけるプロプラノロールの体内動態の比較。 (a)の研究により、AOが塩基性薬物と【α_1】-AGとの相互作用の研究に適したけい光probeであることが示され、またAO法の開発は、【α_1】-AGの迅速かつ簡便な定量を可能にしたため、急病時における塩基性薬物の適切な投与計画を作製するために臨床応用が可能であると考えられる。さらにラットや犬等の実験動物を用いて、血清蛋白結合を測定し、人間における結果と比較した所、血清蛋白結合の面からは犬の方が良いモデルになるものと思われる。又、血清に対する塩基性薬物結合における【α_1】-AG蛋白の寄与を見積もるための簡便な方法として、スルフォサリチル酸と、DEAE-celluloseを用いる方法を開発し、臨床の場への応用も可能であることとした。
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