研究概要 |
モルヒネ系鎮痛薬は古くから広く臨床利用されている医薬品であるが、多くの研究にも拘らずその薬効と毒性(身体依存性)の完全な分離に未だ成功していない。一方我々はモルヒネ-7,8-オキサイドを活性代謝物であると想定し、実際にinvivoから検出し、また本化合物が鎮痛作用を保ちつつ耐性依存性の有意な減弱をもたらす事を明らかにしている。本研究は我々によって発見された合目的性の高いモルヒネ-7,8-オキサイドおよびその類縁体の実用化にむけ、よりきめの細かい構造活性相関の確立の上に立って合成・薬効・毒性の評価を目的とし、代謝的脱アルキル体であるノルモルヒネ,ノルコディンの7,8-オキサイド体と、モルヒネ拮抗薬として知られるN-アリルノルモルヒネ,N-アリルノルコディンの7,8-オキサイド体について合成薬効を検討した。 1.合成--上記4種の新規化合物の収率の良い合成法を確立した。またこれらの化合物は薬理活性等を検討するに十分な安定性を有している事を確認した。 2.薬効--モルヒネ,コデイン,ノル体の7,8-オキサイドは母化合物と比較してほぼ同程度の鎮痛活性を有することが明らかとなり、「エポキシ基導入により鎮痛活性を維持しつつ耐性依存性のみ低下する という我々の仮説は一般性を有する事が実証された。またN-アリール体の7,8-オキサイドは母化合物と同程度のモルヒネ拮抗薬作用を維持しつつ、アゴニスト作用が低下し、エポキシ化によりμ-レセプターに対する親和性はほとんど変化しないがk-レセプターに対する親和性は有意に低下することが強く示唆された。この結果、N-アリルノルモルヒネ-7,8-オキサイドはかなり純粋な拮杭薬であるといえた。 実用化に関しては原料が麻薬であるため法的規制が存在するものの一定の見通しをたてることが出来るまでになった。
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