研究概要 |
ヨウ素イオン選択電極とイオンアナライザーを用いてヒト尿中ヨードを測定する方法を開発し、昨年に引続き基礎検討を追加すると共に、臨床応用を試みた。まずKIを用いた検量線は、【10^(-6)】〜【10^(-2)】の間で直線関係が得られた。【Cl^-】10-400mM添加で、ヨード【10^(-5)】【M_(12)】対してはほとんど影響はなかった。尿の稀釈実験では、原点を通る直線が得られ、尿へのKI添加(5-100×【10^(-6)】M)実験では99.0〜104.8%の回收率を得た。同一尿検体を測定した際の変動係数は、6.2〜10.0%(測定内),5.4-14.4%(測定間)で、臨床検査としては満足すべきものであった。21検体について本法(y)と從来の化学的測定法(x)で測定した所y=1.26+2.03×【10^(-5)】,r=0.92(P<0.001)とよく一致した。24時間尿(y)と、簡便なために早朝空腹第1尿(x)のヨード量を測定した所y=0.99x+1.73,r=0.91(P<0.001)とよく一致したので、簡便な方法を用いることにした。 次に臨床応用のはじめとして正常値を設定した。早朝第一尿につきVoughもちの補正を行なった。すなわちヨード濃度(mole/l)/creatinine(g/l)×1.0(女)または×1.7(男)、93例の健常人について普通食で測定したところ、その値は対数正規分布をし、5.6〜49.0×【10^(-6)】moles/creatinine(g)と広い範囲であった。予備実験として、健常人でヨード制限会あるいはヨード食(海草類)多食を行なってみたが、当然のことながら前者で減少、後者で増加した。また、原因不明の一過性甲状腺機能低下を示す小児例において、入院中尿中ヨードは18-88×【10^(-6)】M/cr(g)で甲状腺機能もほぼ正常であるのに対し、家庭食では尿中ヨードが58-163×【10^(-6)】M/cr(g)と多く、しかも機能低下になることから、海草類多食による"ヨード過剰性"の甲状腺機能低下症と判明した興味ある症例を経験している。本法は簡便なので、今後諸外国との比較など、モニタリングに応用できる有用な方法と思われる。
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