研究概要 |
電子顕微鏡は、医学,生物学,金属工学,地球科学,隕石学から材料科学の分野に至るまでその利用範囲は広い。近年その性能と操作性は飛躍的に向上し、更にその応用範囲は広がりつつある。 最近では、試料室内での動的現象を直接観察する方向に研究者の関心が向いている。このような場合、高倍率でしかも明かるい像が要求される。また電子線を透過させ得る程試料を薄くするのが困難である事もある。このどちらにおいても、試料に強い電子ビームを照射することが必要であり、試料は急速に損傷する。さらに、試料そのものが電子線に弱いため損傷がおこる事もある。この場合は、抵電子線量で試料の損傷がおきる。従って、長時間の露光を必要とする写真フィルム法での記録は極めて困難であった。 本研究は、このような問題を解決するため最近とみに性能が向上し、かつ安価に入手できるようになったマイクロチャンネルプレート(MCP)を電子顕微鏡に組み込むことによって電子線照射量を低減しつつ、かつ明かるくコントラストの高い画像を得るシステムを開発することを目的とした。 MCPを取りつける特殊マウントの設計製作,電子顕微鏡への組み込みを行なうためのフランジの開発,電子顕微鏡本体の若干の改造とともに、一般に普及している高感度テレビカメラや画像を記録するビデオテープレコーダー,及び、デジタル化して記録するためにパーソナルコンピューター等のシステム化を行なった。 この結果、試料の損傷を低減することにたいしては、電子線照射量を、おおよそ1/50程度にすることができ、MCPの電子増倍効果による高輝度化は、本システム全体の解像力を大幅に向上させ、今回の目的は十分達成された。そして、MCP自体の改良によってもっと大きな高輝度化が達成できることが明らかになった。
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