研究課題/領域番号 |
60010011
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
涌井 昭 東北大学, 抗酸研, 教授 (20006076)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
1985年度: 12,000千円 (直接経費: 12,000千円)
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キーワード | 選択的癌化学療法 / アンギオテンシン【II】 / 昇圧癌化学療法 / 腫瘍組織の循環特性 |
研究概要 |
本研究の目的は、腫瘍組織の循環病態生理を解析し、それに基づきより有効な選択的癌化学療法を確立するにある。そのため、昨年までに明らかにされた腫瘍組織の循環特性の解析をさらに進め、アンキオテンシン【II】(A【II】)昇圧下においては、腫瘍血流の増加に伴って腫瘍血管内外の水力学的圧差が選択的に拡大することを明らかにした。また、ヒト肝細胞癌を対象にして、腫瘍組織内血管ならびに宿主側の担癌動脈枝の変化が病理学的に検討され、その結果、肝癌内血管の中膜平滑筋層には破壊または低形成がみられるが、肝癌外部でも半径100〜1000μmの動脈域には有意に平滑筋層の菲薄化が生じていることが証明された。これらの所見から、これまで得られたA【II】昇圧時の腫瘍組織血流の選択的増加の現象が説明され、さらに制癌剤の腫瘍組織への到達量の選択的増加が期待された。これを証明するために、実験的、臨床的にA【II】昇圧下における薬剤の静注あるいは動注時の薬動力学的解析を行い、いずれの場合においても、昇圧時には非昇圧時に比べて薬剤の腫瘍組織内到達量の明らかな増加を認め、前記の検討成積を裏付ける結果を得た。 代表者はこの腫瘍組織の循環特性を利用した癌化学療法の臨床導入をはかり、これまでにも、A【II】昇圧を併用した本昇圧癌化学療法が種々の固形癌の効果増強に資することを報告してきた。今回は従来化学療法抵抗性といわれている進行膵癌を対象として本療法を展開して50%という高い奏効率を得た。また、現在本療法を原発性肝癌および転移性肝癌に対する動注化学療法に応用した研究も進められている。さらに、昇圧という状態が心臓に与える影響しホルダー型心電図で検討されているが、これまでの解析では、心電図異常の発現は稀であり、安全性も確認された。
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