1. 基礎研究:がん加温療法における重要な研究課題は、表在性から深部までの腫瘍を可及的選択的に目的温度に加温しうる装置と、病巣の温度を正確に測定できる温度測定技術を開発すること、熱の生物効果の単位(Thermal Dose)を確立することである。加温装置に関しては、3cm以下の表在性腫瘍であれば、2450MHz micro波により加温できることが明らかになった。深部がんに対しては、現在AnnularPhased Array System75MHz誘導加温と、8又は13.56MHzRF誘電加温の2つの方式による加温装置が開発された。前者の問題点は組織を限局性に加温し難く、全身加温に近い体温上昇が起きやすいこと、後者は皮下脂肪が加熱しやすいことである。RF誘電加温による皮下脂肪の加熱は、電極を水パットで冷却する方法により改善され、1.5cm以下の皮下脂肪であれば、深部加温が可能になった。温度測定技術に関しては、現在のところ金属センサーの刺入による以外に確実な方法がない。非侵襲的温度測定が理想であるので、NMR或は超音波による温度測定法を開発中である。Thermal Doseについては、マウスを用いその正常組織と移植腫瘍に対して温熱併用放射線治療における生物効果を定量化する試みとしてThermal Enhancement Ratioを指標にしてデータを集積している。 2. 臨床研究:上記の加温装置を用い、脳腫瘍、食道癌、腹部消化器癌、婦人科領域の悪性腫瘍に放射線、或は制癌剤併用加温療法を行なっている。対象とした腫瘍は総て従来の治療法では治癒不能と判定された難治がんである。治療成績は表在性がんでは放射線との併用により約60%の局所制御率が得られたが、深部がんでは約20%にとどまった。この最大の原因は、現在の装置ではなお十分深部を加温し得てないためと考えられる。また、腔内加温、組織内加温も試み、組織検討で加温の制がん効果が立証された。
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