研究概要 |
大腸癌および腺腫のパネート様細胞を各種染色、免疫組織化学、電顕的に調べ正常小腸のものと比較した結果、腫瘍性パネート細胞の特徴として好酸性が弱く異染性で、電顕でも内容物の電子密度の不均一性が認められその未熟性が確認された。一方、大腸粘膜には径1cm以下で高率に癌を含む平坦に近い腺腫が存在しており、大腸癌の新しい母地としての重要性が示された。また蛍光測光法で大腸腺腫と癌のDNAパターンを調べたところ、腺腫では正常上皮と同様なdiploidパターンを示すものが多く、癌ではpolyploid,areuploid,およびこれらが混じたmosascpatternが主であることが分った。今後は特に異型の強い腺腫に的を紋りDNAパターンを明らかにする必要性があると考えられた。Ex vivo autoradiographyによる家族性大腸ポリポージスの背景粘膜の研究では labeling indexおよび標識細胞の分布等の点で通常の担癌大腸粘膜との間に差異は認められず、家族性大腸ポリポージスの腺腫も正常な増殖帯から腺腫の芽として発生する可能性が強いと考えられた。血液型H物質についてはUEA-1結合物質を免疫原として抗体を作製したが、その免疫組織学的検索でもレクチンを用いた場合と同様に近位大腸に反応が認められたが遠位には少なく癌になると陽性化することが示された。高分化大腸癌株で作製したモノクローナル抗体中にCEA特異抗原決定基と反応する抗体が見い出され、そのエピトープが糖鎖である可能性が示された。Pgk-1a/Pgk-2bモザイクマウスを用いたDMH発癌実験では発生する癌の大部分がA型で、ABのモザイク型は10%しかできなかった。これはA型陰窩の発癌剤に対する高感受性を示すと考えられ、現在癌周辺の陰窩の検索を進めている。8例の大腸癌患者癌細胞から抽出したDNAを用いたTransfection assayでK-ras,N-ras以外にraf oncogeneが見つかり、そのexon7-9近傍の組換えが示唆されている。
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