研究概要 |
本研究班は細胞の癌化に伴なって発現様式が著しく変わる遺伝子について遺伝子構造の解析と発現制御機構の変化を明らかにして癌細胞の遺伝子発現制御の異常の本質を究明す目的で編成されたものである。 取り上げられている遺伝子は発癌物質の代謝活性化に関与しているP-450遺伝子、癌化に伴なって発現様式の著しく変化するaldolase,kininogen,glutathion s-transferase(GST-P),顕粒球コロニー刺激因子(G-CSF),tRNA-guanine transferase遺伝子、ラット腹水肝癌AH60C細胞に特異的に発現している遺伝子、発癌プロモーター処理によって特異的に発現するP32蛋白質遺伝子などである。P-450、Aldolase遺伝子については発現に重要な役割を持つ領域の存在が明らかにされ、前者については新たなinducible enhancerの存在が確かめられ後者については発現に伴なって出現する二ヶ所のDNase感受性の構造及びその領域に結合する蛋白質の同定がなされた。GST-P,G-CSF 遺伝子については各々cDNAが初めて単離され、蛋白質の一次構造が決定され、さらに遺伝子の構造解析が進展しつつある。さらに後者についてはG-CSF異常産生腫瘍細胞に遺伝子再編成がおこっていることが明らかになった。kininogen遺伝子についてはラットにおいて新たに2つのT-kininogen遺伝子の存在が確認され、この遺伝子が炎症時に転写活性化をうけることが示された。腹水肝癌細胞において、発現異常を示しているものはcDNAクローンの解析から、Glyceroaldehyde 3-phosphate脱水素酵素が顕著に増加、2u-globulin haptoglobinが抑制されていることがわかった。この他にcDNAの単離に向けての研究は各々の蛋白質の単クローン抗体や蛋白質の文分アミノ酸配列からの合成ヌクレオチドの調製が完了してcDNAライブラリーからのスクリーニングが行なわれている。癌細胞で発現異常が示されている遺伝子の発現制御機構の解明に向けて各々研究が行なわれているがどの程度統一的な機構で理解されるのか今後の研究の進展を待ちたい。
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