研究概要 |
〔研究目的〕ポリADP-リボース合成酵素は種々の蛋白質をポリADP-リボシル化しその機能を調節すると考えられているが、in vitro,in vivoの系でポリADP-リボースの発癌、DNA修復、化学療法剤の効果促進等における役割について明らかにする。 〔研究成果〕 1)ニワトリ肝臓核由来のモノADP-リボシル化酵素が合成ヒトc-Ha-ras蛋白質をADP-リボシル化することを見出した。又この酵素は合成ペプチドのアルギニン残基をADP-リボシル化し隣接セリン残基のリン酸化を阻害する。 2)ポリADP-リボシル化はDNAポリメラーゼαとprimaseの活性を阻害するが、primase活性促進因子の活性を阻害しなかった。 3)精製ヒト胎盤ポリADP-リボシル化酵素を限定分解し、部分一次構造を決定したところ、proline含む独特の構造を持つことが分った。ウシ胸腺由来のポリADP・リボース合成酵素に対するポリクローナル抗体を用い[【^3H】]leucine標識HeLa細胞での酵素分解速度を調べたところ半減期は18時間であった。又酵素のN末端はblockされていた。 4)仔牛胸腺よりポリADP-リボースグリコヒドラーゼを精製しポリADP-リボースの分解がprocessiveな反応であることを明らかにした。 5)マウスの細胞でのメチルメタンスルフォネイト処理後のDNA切断の増加には【Ca^(2+)】,【Mg^(2+)】依存性エンドヌクレアーゼのポリADP-リボシル化阻害が関与していると示唆された。ヌジェチルニトロサミンと3-AB併用投与によるラット肝発癌の初期酵素偏位小細胞巣が肝癌に進展するものであると長期動物実験により確認した。さらに、ストレプトゾトシンとニコチン酸アミドの併用投与で誘発したラット膵B細胞腫に特異的に発現される遺伝子に単離し分子量9193の塩基性蛋白質をコードしていることを明らかにした。
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