研究概要 |
T細胞性悪性リンパ腫は構成腫瘍細胞の細胞性格の多様性を反映してその組織像、細胞像及び臨床像が極めて多彩多様であり、その系統的理解はB細胞リンパ腫に比して未だ極めて不完全な状態にある。本研究はT細胞性腫瘍全般の免疫細胞学的性格の検索、染色体異常の検索、腫瘍細胞の分子遺伝学的解析を行い、その結果をもとに、それらの示す細胞病理学的所見や病態を対応させ、その系統的理解、ひいては合理的な分類法の確立を目的とするもので、本年度に得られた知見は以下の如くである。 1.AILD(血管免疫芽球性リンパ節症)型病変多数症例につき協力研究を行い、次の結果を得た。 (1)染色体分析及びDNA再編成の検索により、一部に確実にT細胞腫瘍性格が証明された(鎌田、上田)。 (2)増殖細胞性格は多くはヘルパー(須知、本告)、一部はサプレッサー(菊池、三方)であることを示した。 (3)瀘胞樹枝状細胞の増生巣の存在を指摘した(難波)。 (4)一例よりIL-2依存性ヘルパーT細胞株を樹立した(若狭)。 2.びまん性大細胞型Tリンパ腫の中で、ホジキン病増殖細胞と共通の性格(Ki-【1^+】,【Ia^+】,【Tac^+】)を示すものが特に小児非ホジキンリンパ腫大細胞型の優位を占め特徴的組織像を呈することを明らかにした(須知)。 3.膜抗原(Leu【11^+】,Leu【7^-】)及びリンフォカイン応答性よりpre-natural Killer cell 白血病とも言うべき小児白血病の存在を示した(谷口)。 4.ATLL細胞に反応する非抗Tac、非抗HTLV-1特異モノクローナル抗体を作製(花岡)、また胸腺T細胞を区別する2抗体即ちL6(OKT6に一致)及びL9(髄質細胞に強陽性の新しい抗体)を開発した(菊地)。 5.増殖細胞の指標としてDNAポリメラーゼα(pol-α)掫ABC法で染色、リンパ球の各種分化抗原をAPAAP法で染色する免疫二重染色法を確立し、pol-α陽性細胞の集簇は腫瘍性増殖を強く示唆することを示した(上田)。
|