研究課題/領域番号 |
60015033
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
翠川 修 京都大学, 医, 教授 (40025515)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1985年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | ニトリロ三酢酸 / NTA / Fe-NTA / free鉄 / ラジカル形成能腎癌 |
研究概要 |
ニトリロ三酢酸(NTA)と鉄との化合物Fe-NTAが、ラット腎に強力な発癌作用を示す事を私達は見いだし、その発癌機構を検討している。 本年度の研究成果は、1.Al-NTAもFe-NTA同様の急性腎毒性を有するが、Al-NTAには発癌性が見られなかった。Co-NTAでは腎毒性も軽度であり発癌性も見られなかった。 2.ブレオマイシン依存性DNA破壊を利用してfree鉄(ラジカル産生を促進する鉄)を測定するin vitroの系(Gutteridge 1981)を用いるとFe-NTAは新鮮なFe-【Cl_3】或はFe-EDTAの数倍のラジカル形成能を有し、Al-NTA、Co-NTA、Fe-desferri-oxamineには全くその作用は見られなかった。 3.ラットにFe-NTAを3-5mg鉄/Kg体重投与すると1時間後より腎、肝のmalondialdehyde値が上昇し、4時間でピークとなり、24時間で投与前の値に戻る。すなわちFe-NTAを動物に投与することにより腎、肝の脂質過酸化が亢進していることが確認された。Al-NTAには脂質過酸化促進作用は見られなかった。 4.前述のin vivo Fe-NTA投与実験をビタミンE投与動物に行うとMDAの産生は腎、肝において有意に抑えられた。更に亜急性実験の結果ビタミンE投与動物では3mg鉄/Kg体重では腎に障害はみられず、逆にビタミンE欠乏動物では同量で52日を平均として腎障害により全匹死亡することが確認された。 5.マウスにおいて発癌性の検討をした。マウスにおいては急性腎毒性に雄雌差が存在し、2.7mg鉄/Kg体重を投与したところ雄35匹中18匹に急性死が見られたが雌では15匹投与し死亡は1例も見られなかった。残ったマウスについて腎癌発生は17匹中8匹に見られたが、雌では15匹中1匹発生したのみであった。生体で必須金属の鉄が家庭用洗剤の助剤に欧米で多用されている物質NTAと結合することにより毒性、発癌性を示すことは重要であり、これがラジカル反応によることを確かめ得たのは重要知見と思われる。更に研究を進めたい。
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