研究概要 |
1)抗ATLA抗体がATL白血病細胞のATLA発現を抑制することを示した。このことは、患者白血病細胞中にATLウイルス遺伝子発現がないことを少くとも部分的に説明すると思われる。2)ATLA成分の一つ、gp68が、enVとpX【IV】両遺伝子の融合蛋白であることをその塩基配列より示した。すべてのATL患者には、抗gp68抗体が存在することから、pX【IV】遺伝子が発現されたことを示唆した。3)ATLA発現が発癌イニシエーターであるMNNGで促進されること、一方、ビタミンA,C,Eなどがこれに抑制的に働くことを証明した。ATL発症が、ウィルス感染者の内のごく一部に限られることから、このような環境因子の役割について考察することは、重要である。4)南アフリカの黒人とサル(ヒヒ、ミドリザル)にATLA抗体陽性者がいることを確認した。結果的には、地理気象学的条件、性的成熟などの条件が、感染を規定する因子として重要と思われた。5)多数のヒト、サル由来細胞のATLA抗原(p19、p24)をペプチドマップを用いて比較、分類した。一般に、p24の方が、p19より、良く保存されていた。6)AIDSウイルスがMT-2やMT-4などのATL由来細胞に非常に易感染性、易増殖性を示し、その結果これを破壊することを示した。この性質を利用してAEDSウイルスの定量化、中和抗体測定などに成功した。7)ATL発症のメカニズムとして、IL-2レセプターのトランスメンブレン蛋白と、そのリン酸化に関係する別の蛋白について検討中である。8)染色体のブレークポイントとATLV組み込み部位を、さらに詳しく調べている。
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