研究概要 |
コンカナバリンA(Con-A)、レンズマメレクチンA(LCA-A)、赤血球凝集性インゲンマメレクチン(E-PHA)を用いたレクチン親和電気泳動によって分離されるαフェトプロテイン(AFP)の各バンドについて、肝細胞癌における出現頻度と特異性を検討するとともに、その一部の分子種について糖鎖構造の解析を行った。 1. AFP各バンドの肝細胞癌での出現頻度および特異性 血清AFPレベルが200ng/ml以上を有する肝炎、肝硬変例12例、肝細胞癌例19例について、Con-A非結合性バンドEx,LCA-A結合性バンドH、E-PHA中間結合性バンドi、弱結合性バンドh、強結合性バンドyの出現率を、非癌肝疾患例の標準偏差の2倍を越える値を陽性として検討したところ、非癌肝疾患における陰性例の%(特異性)オヨび肝細胞癌における陽性例の%(感度)はそれぞれ、Ex(100,68),H(83,63),i(92,32),h(100,74),y(100,47)であり、Hおよびhの肝細胞癌における特異性を確認することが出来た。またExの増加の程度は僅かであったが、肝細胞癌に対する特異性の高いことが明らかとなった。 2.肝細胞癌に特異性の高いAFPの糖鎖構造 肝細胞癌由来培養細胞株HuH-7および臍帶血清の純化AFPをCon-A親和カラムを用いて分画し、Con-A,LCA-A,E-PHAに結合性を有するhバンドAFP,Con-A結合性,LCA-A,E-PHA非結合性のlバンドAFPをそれぞれ得た。ヒドラジン分解で糖鎖を遊離し、その構造を検討した結果、E-PHA結合性のAFPは非結合性のAFPに比してシアル酸の含量が極めて低く、bisecting Nアセチルグルコーサミンは存在しなかった。Nアセチルグルコーサミンが存在しなくてもE-PHAに反応性を有することは、AFP糖鎖の特異な点と考えられた。LCA-A結合性のAFPにはCoreにフコースが結合していることが確認された。
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