我々はラットでアルドラーゼアイソザイム遺伝子の構造解析を行い、A、B両型のゲノム遺伝子構造をすでに明らかにした。ここではこれをもとに癌化でのアルドラーゼ遺伝子の発現状態を正常各組織と比較し、その相違点を特にここではメチレーションに焦点をあて解析を進め、発現転換機構解析の手がかりとした。方法としてA型を発現し、B型を発現していないラットの骨格筋、肝癌、脳組織あるいはB型を発現し、A型をほとんど発現していない正常肝組織などから高分子 DNAを調整し、Hpa【II】、Msp【I】およびXho【I】などで切断しA型のゲノムDNAをプローブに用い、サザーンブロッティングを行い、メチル化、非メチル化部位を決定した。その結果アルドラーゼA型遺伝子では、遺伝子の上流はA型の発現の有無にかかわらず、調べたすべての組織でメチル化されていることがわかった。しかし遺伝子内部では、すべてのHpa【II】部位を調べたわけではないが、発現の有無にかかわらず、メチル化を受けていないことがわかった。ただ例外的に思えたのは、A型の発現が比較的強い骨格筋、脳、肝癌においてよりは、むしろ発現が強くおさえられている成体肝においてかえって遺伝子上流のHpa【II】部位が感受性であったことである。このことは脱メチル化は遺伝子発現には必要とはいうものの、必ずしも十分な条件でないことを示す一例といえる。ここでは腹水肝癌を用いたが、同じくA型を発現している脳、胎児肝あるいは発現はしているものの強く抑えられている成体肝とメチル化を比較したところ、脳とは同じようなパターン、成体肝とは幾分異なる傾向が認められた。ただ全cDNAをプローブに用いた時、肝癌特異的に脱メチル化の部位が観察された。しかしこれはDNAポリモルフィズムの問題もあり、今後症例をふやしていく必要がある。
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