研究課題/領域番号 |
60015081
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研究種目 |
がん特別研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
桑野 信彦 大分医科大学, 医, 教授 (80037431)
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研究期間 (年度) |
1985
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研究課題ステータス |
完了 (1985年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1985年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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キーワード | 腫瘍耐性 / 多剤耐性細胞 / 耐性克服 / 合成イソプレノイド / 制癌剤細胞内レベル / 組み合わせ療法 |
研究概要 |
癌の化学療法を行う際、多くの制癌剤に対する感宍性が減少するいわゆる腫瘍耐性また多剤耐性の出現は臨床分野でしばしば経験される。しかしその機序は複雑で克服する手段に関する研究も末だ少ない。そこでわれわれはこの腫瘍耐性の問題を細胞レベルで単純化して把握するために、多くの制癌剤に対して同時に耐性を示す多剤耐性の癌細胞を駆使した培養系ならびに担癌動物の実験系で検索を進めた。その結果次の事項について明らかになった。すなわち、〔1〕ヒト上顎癌KB細胞から樹立した多剤耐性【Ch^r】-24細胞はアドリアマイシン(ADM)やビンクリスチン(VCR)などの制癌剤の細胞内蓄積が著明に減少していた。しかし【Ch^r】-24細胞を薬剤非存在下に培養を1か月続けて単離した復帰変異株は制癌剤に対してKB細胞と同レベルの感受性と細胞内蓄積量を示した。〔2〕カルシウム拮抗剤やカルモジュリン阻害剤であるチオリダジンなどは【Ch^r】-24の多剤耐性を殆んど完全に培養系で克服するひとが観察された。〔3〕制癌剤の抗癌効果を増強する合成イソプレノイドはまた【Ch^r】-24の多剤耐性を克服し、さらにVCR耐性のP388マウス白血病細胞担癌マウスの耐性も克服した。これら有効な合成イソプレノイドはカルシウム阻害作用がないことからカルシウム拮抗作用と耐性克服作用とは相関しないことを示唆した。〔4〕S-180肉腫やP388白血病担癌マウスにおいてニトロソウレア系制癌剤、シスプラチンまたADMなどの制癌剤の抗癌効果をスクワレンやレチノールパルミチン酸(RP)が増強した。〔5〕ビタミンAのうちRPはさらにVCRまたADM耐性のP388白血病担癌マウスの耐性を克服することを見出し臨床応用への可能性を示唆した。以上の研究結果を基礎にして今後さらに耐性獲得の分子機序を詳細に解析するとともに、臨床応用可能な組み合わせ療法については副作用の検討を加えていく。
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