研究概要 |
当研究室では現在、天然界より抗腫瘍活性物質を得るべく研究を進めており、その目的に一歩近づくことができた。まず、茜草根より抗腫瘍活性を示す環状ペプチド(RA類)を単離、構造決定し、抗腫瘍スペクトルの検討も行った。 構造的には、D-alanine1分子,L-alanine2分子,N-methyltyrosine3分子より成り、エーテル結合を有する2環性のヘキサペプチドである。RA系化合物6種を単離し、それぞれについて抗腫瘍スペクトルを検討した。また、種々の誘導体を作製して、マウスのP388腫瘍系に対する構造活性相関を検討した結果、終局的にはRA-【VII】に的を絞ることになった。RA-【VII】はさらに、L-1210,B16melanoma,Lewis lung carcinoma,Colon38,Ehrlich carcinomaにも顕著な抗腫瘍活性を示した。RA-【VII】の急性LD50値は、i.p.投与で10.0mg/kg,i.v.投与で16.5mg/kg,p.o.投与で63.0mg/kgであり、その治療比は、i.p.でMMCの10に対し、RA-【VII】は400と良好な結果を示した。 p388細胞の高分子合成能に及ぼすRA-【VII】の作用では、leucineの取込みを選択的に阻害することより、増殖抑制作用の一次作用は、タンパク質合成阻害であると考えられた。現在、肺転移モデルのB16melanomaBL6に対してはADMと同程度の阻害活性を示している。 RA-【VII】に関しては今後、臨床段階での良好な治療成積が期待される。 また、インドネシア産のクスリウコンより、Sarcoma-180Aに対して抗腫瘍活性を示すビサボラン系セスキラルペンを単離した。 さらに、海産センブレン型ジテルペンに関しては、光学活性体の立体選択的合成を目指している。D-マンニトールより、D-グリセロアルデヒドアセトアニドを経て、まずラクトン部の構築を行った、次いでこのラクトンに立体選択的なクライゼン転位を骨子とした炭素鎖の延長を行い、ほぼ目的とする天然物の基本骨格の合成に成功している。
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