桜島火山では、これまで続けてきた火口から放出され大気中に拡散した火山ガス中のHC1、【SO_2】両成分の連続測定、同島南西部の持木地区におけるボーリング孔での自動ガスクロマトグラフによる連続観測、同海岸に噴出する温泉ガスの定期観測をこれまでに引き続き実施した。火口からのガスについては、今年度のHC1/【SO_2】の値は年平均1.6で、昨年度の値の約2倍で、特に7月の月平均値は2.4と著しく大きな値であった。このことは今年度の桜島火山の活発な爆発活動(年間452回)と対応したものである。またボーリング孔での【H_2】ガス濃度は6月中旬から7月中旬にかけて著しく増大し、8月以降の大量の火山灰を放出した活動の前兆とも考えられる変化が認められた。一方持木海岸に噴出する温泉ガス中の【H_2】ガス濃度には特に大きな変化が見られなかった。 昭和52年に噴火した有珠火山は、現在もなお700℃以上の噴気活動が続いており、噴気活動の減衰は著しく遅いことが判明した。十勝岳は1985年5月〜8月に3回の小噴火を起したが、活動中の火山ガスに較べ、活動終了後の8月21日に採取したガスは、活動の衰退を示す組成に変化した。また雌阿寒岳、樽前火山の調査では、火山ガスの温度、噴出状況、化学組成などから、1974年に較べ両火山共やや活動度が弱まったと考えられる。 草津白根火山における火山ガス、湖沼水、河川水、温泉水などのくり返し観測の結果、1982-1983年噴火後も山頂火口内、山頂北側斜面で活発な噴気活動が続いており、まだ活動が沈静化していないことを示している。 火山地帯で使用できる可搬型ガスクロマトグラフを試作し、現地でのテストの結果、若干の改造で実用化できる装置ができた。また地温や還元性ガス成分の連続観測用の安価で携帯に適したデータ収録装置も昨年度に引き続き改良し、実用化の見とおしが立った。
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