昭和60年7月の梅雨末期において石川県能登地域では断続的な豪雨の来襲により、洪水や土砂による災害が頻発し、死者9名、公共土木施設被害額100億円以上の大きな被害となった。本研究ではこうした能登豪雨災害の実態を調査し、災害発現の機構を探ることによって当該地域の災害発現の素地を評価すること、また防災対策が効果的であったかなども併せて調査し、今後の防災対策の強化のための知見を得ることなどを目的とした。研究内容は大きく、1.降雨・流出の問題、2.河川・河道災害に関するもの、3.地盤崩壊に関するものに分けられ、それぞれ現地調査、資料収集によって得られた災害事象の把握のもとに、災害事象の発生機構、既存の防災対策工の効果などについて検討がなされ、さらにそれらを総括して、今回の能登災害の位置づけと、それに関する調査研究結果を今後に活かす方法を考察した。 1において、今回の豪雨はある程度の規模の降雨(それぞれは10数年に一度程度のもの)が、同一梅雨期に数度ひき続いて生起していることが特徴で、こうした連続生起を考えると100数十年に一度程度の確率のものであることがわかった。このように数度の中規模降雨の連続が、河川、地盤災害に与える効果に着目、流出解析も行った。 2においては、(1)越流とそれによる破堤、(2)水衝部での洗掘破堤、(3)護岸を主とする河川構造物災害、(4)流出流送土砂による河道埋塞などを特徴的事例をもとに考察した。能登地域の地形と今回のような波状出水がこれらの災害に果たす役割についても検討された。 3においては、とくに能登有料道路の高盛土崩壊が典型例として詳細に調査された。その他、道路沿いの切土災害についてはその分布と対策工の効果などが調べられた。また小規模な盛土の被災の頻発に注目し、数多くの事例から特徴を抽出、危険度の評価を試みた。
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