研究概要 |
本研究は渇水を一つの災害ととらえ、まずその素因・誘因から被害出現までのプロセスを階層構造的に認識するとともに、とりわけ素因・誘因の一つである気象・水文レベルでとらえた渇水の地域的・時間的生起特性を分析した。さらに渇水のインパクトをより直接的にうける利水システムについて、渇水の危険度を評価し、その危険を回避する制御方策あるいは緩和策として河川表流水と地下水の有機的運用およびダム貯水池による渇水時の水量制御法を展開した。すなわち、(1)渇水問題の階層構造的認識;気象レベルの少雨から末端需要者の給水制限に至るまでのプロセスをシステム論的に分類・整理した。(2)渇水の生起とその強度;少雨特性について、琵琶湖流域の日降水量データをベースに渇水持続特性を検討するとともに、少雨の空間的生起特性を多次元正規分布で考察した。(3)利水システムの危険度評価;渇水の危険度が地域あるいは都市の利水システムに大きく依存していることを見出すとともに、ダム,取水堰,水供給・浄化処理・排水処理施設のネットワークからなる利水システムの渇水危険度を水量・水質両面を考慮して評価する方法論を構成した。(4)河川表流水と地下水の有機的運用;豊水期には河川表流水をダムおよび地下滞水層に貯留・かん養し、渇水期にダムおよび地下水から放流・揚水するという両者の有機的運用モデルを展開した。(5)ダム貯水池群への流入量予測と渇水時の操作ルール;わが国を代表する大規模貯水池である琵琶湖をとりあげとりわけ水位低下、回復に大きく係わる湖面蒸発量、融雪流出現象をモデル化し、流入量の予測精度の向上をめざした。また、直接、琵琶湖水位の予測にカルマンの瀘波・予測理論を適用した。一方、これら流入量予測とあわせてダム貯水池操作問題に関して、ファジイ理論の適用や評価関数の選択基準および渇水時の最適な操作ルールの抽出を展開した。
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