研究概要 |
降水滴およびエアロゾル中又はその表面における亜硫酸および亜硝酸の酸化機構や酸化速度を室内実験で研究し、その結果の大気化学における重要性の評価を行った。全国各地で捕集した雨水中に亜硫酸塩を添加し、亜硫酸の酸化を追跡した。特に超高圧水銀灯の光を照射して酸化速度の増加を調べた。他方降水中の金属成分を中性子放射化法で定量し、酸化速度定数と比較検討した。反応は-d〔S($$IV$$)〕/dt=k〔S($$IV$$)〕の擬一次反応で表わしたが、各試料のKはO-211×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)の範囲にあった。再蒸留水についての$$K_1$$は3.3×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)であった。降水試料に EDTAを加えると反応が停止した。又K=(a〔M〕+b)で表わされる。K=C〔S($$IV$$)〕+d$$〔S(IV)〕^(0.5)$$で表わせる場合もあり、B$$a!¨$$ckstr$$o!¨$$m機構で説明可能であった。以上のことから、降水中の反応が金属の触媒作用で進行するとしても単純でないことが示唆される。同じく降水試料中にNaN$$O_2$$を加え、N($$III$$)の減少を追跡したが、そのKは(5〜12)×$$10^(-8)$$($$S^(-1)$$)の範囲内にあり、野外での変換速度の観測値に比較して、水溶液中の亜硝酸の酸化の寄与は大きくないと考えられる。次いでN$$H_4$$N$$O_3$$溶液にS($$IV$$)溶液を加え、光照射し、S($$IV)の減少を追跡した。この場合の S($$IV$$)の減少はN$$O(^-_3)$$+hu→N$$O(^-_2)$$+O,O+S($$IV$$)→S$$O(^2-_4)$$によると予想される。NaCl,MgCl粒子上での硫酸生成には$$H_2$$$$O_2$$が必要で、相対湿度に強く依存した。大気エアロゾル上の硫酸生成能にはCaOの寄与が大きいことが分ったが、CaO4μg/$$m^3$$の時の変換速度は0.03%$$hr^(-1)$$,NaCl5μg/$$m^3$$$$H_2$$$$O_2$$1pphの時の変換速度は2×$$10^(-4)$$%$$hr^(-1)$$であって、エアロゾルを介したS$$O_2$$の酸化速度は小さい。最後に降水中の触媒による亜硫酸の酸化反応速度を$$H_2$$$$O_2$$,$$C_3$$による酸化と比較した。大気中の$$H_2$$$$O_2$$濃度はよく分っていないが、触媒による亜硫酸の酸化速度は他の酸化機構の場合に比較して小さいようである。しかしB$$a!¨$$ckstr$$o!¨$$m機構やN$$O(^-_3)$$の光解離に伴う酸化機構の重要性を評価する必要があろう。
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