研究概要 |
赤潮として問題になる鞭毛藻類の発現は海水中のケイ酸がほぼなくなった時であり、その規模はリンや窒素に対するケイ素の量比という仮説を験証し、赤潮問題に対する方策を立てることが本研究の目的である。この目的を達成させるために、噴火湾の中央部(水深93m)、入口(水深95m)および外(水深87m)の3点を観測点とし、ここで春のブルーム期を中心に周年観測を試みることにした。今年度は、6、7,8,9,11,12月に各1回の観測を行なった。また1-3月に5回の観測を行なう予定である。採水は、各点において表面から10mおきに70mまで、さらに5mおきに海底まで行ない、温度、塩分、溶存酸素、リン酸、ケイ酸、硝酸、亜硝酸、アンモニア、アルカリ度などの測定を行なった。また、同時にプランクトンを採取し、湿重量、種組成の測定も行ないつつある。 夏の成層期の6-9月に、湾央部の観測点で得られたケイ酸、リン酸、硝酸+亜硝酸の結果をみると、表層では、栄養塩はいずれも春のブルーム期に使い尽くされ、海底付近では再生はされているものの、ほぼ濃度0の状態にある。透明度等からみて有光層下部は50-70mにあると思われる。そこで、この層に海底から運ばれてくる栄養塩の量について考えてみる。 溶存物質の鉛直フラックス(F)は、F=-D(∂C/∂Z)であるが、鉛直拡散係数Dを決めるのは容易でない。もし50m層と80m層におけるDの値と、50-80m層における存在量がそれほど変わらないとすれば、50-80m層で消費される栄養塩の相対比は、2層における濃度勾配(∂C/∂Z)の差になる。それで、50m層と80m層における濃度勾配を計算した。これを見るとケイ酸はこの50-80m層間で著しく減っており、6月を除けば、リン酸とチッ素化合物の勾配はほとんど減らず、逆に増加している場合もある。
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