研究概要 |
本研究は、我々が生物試料中の超微量のSH化合物の蛍光試薬として開発したNAM(N-9-アクリジニルマレミド)がR-SHの他に 【SO_2】,【H_2】Sとも反応して強い蛍光をもつことを基礎とし、「試水に試薬を反応させ、蛍光を測定する」きわめて簡単な環境計測法を開発することを目的とした。 (1)雨水中の【SO_2】の新しい蛍光微量分析法の開発:亜硫酸は酸化に対し比較的不安定であるため、雨水中の亜硫酸については極めて重要な分析項目であるにもかかわらず、従来の方法では分析が困難であった。今年度の研究で、我々は雨水中のこの不安定な微量亜硫酸をNAMにより安定な蛍光誘導体として捕集し、数mlの雨水を用いて分析定量することができた。NAMと雨水中の亜硫酸との反応は〜30分に終了し、冷暗所に置く限り一週間以上安定な蛍光を与えた。標準物質添加による蛍光強度と亜硫酸濃度の間にon columnで1〜10pmolで 0.9991,10〜100pmolでは0.9998の相関係数で比例関係があった。本法の変動係数は1.06%(n=5)で、検出限界は10ppbであった。亜硫酸以外の大気中含硫黄化合物としては、硫化水素やメルカプタイドが考えられる。前者は本pH条件下では反応せず、後者はHPLCにより完全に分離しうることが明らかとなった。又、大気中金属についてはEDTA添加によりその影響を除き得た。仙台における降雨水(85年11月)に本法を応用したところ0.15〜0.60ppmの値が得られた。 (2)廃水中の【SO_2】,C【H_3】SH,【H_2】Sの定量法の開発:有機物を含む廃水下の土壌では腐敗の進行と共に還元状態になり、【H_2】S,【SO_2】及びC【H_3】SHが発生する。59年度は、【H_3】S,【SO_2】に関してNAM法による蛍光分析法を開発した。今年度は、これに加えてメチルメルカプタンについてその蛍光反応物の分離と構造決定を行い、これらを分離するHPLC法を報告した。
|