研究概要 |
1. TCDDのポルフィリン代謝への影響:精製したウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素に対するPCDD異性体とPCB異性体の阻害作用を比較検討した。その結果、2,3,7,8-TCDDは桁違いに強い酵素阻害作用を持つことが判明した。酵素一分子当り数分子の2,3,7,8-TCDDによって阻害された。他のPCDD異性体も酵素阻害がみられたが約100倍程度弱く、3,4,5,3′,4′,5′-Hexachlorobiphenylと同程度であった。2,3,7,8-TCDDが強いポルフィリン症の惹起作用を有するのはそのウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の強い阻害作用によると考えられ得る。 2. TCDDの酸化的リン酸化の影響:TCDDの特異な憔悴作用の本態を明らかにするために、ミトコンドリアの酸化的リン酸化に対する影響を検討した。その結果、2.3.7.8-TCDDは極めて低濃度で、State3の呼吸活性を抑制し、State4の呼吸活性を昂進させRCRを著しく低下させた。他のPCDDも同様の効果が認められたが、約100倍作用が低く、PCBと同程度であった。またリピッドのスピンプローブを用いてESRを測定した結果2.3.7.8-TCDDはミトコンドリア膜と特異的に結合し、膜構造を変化させ脱共役作用をおこすことが分かった。 3. 骨格変異に及ぼす影響:Jcl:ICRマウスに妊娠6〜15日の本連続、または妊娠12日に単回TCDDを強制経口投与し、胎齢18日の胎仔を観察した。連続投与では、対照1,3,10μg/kg群での口蓋裂発現率は、1,3,27,93%、腎孟拡大の発現率は、9,41,68,100%であった。単回投与では、対照、10,20,40,80μg/kg群での口蓋裂発現率は、0,3,25,71,90%であった。胎仔の骨格を精査中であるがTCDDの影響を明暸に示す指標は口蓋以外では見いだされず、TCDDは器官特異性の高い催奇形物質であると思われる。
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