研究概要 |
5員環2-フェニル-1,2-オキサホスホラン(1)はカチオン開始剤によって開環重合し、ポリ-(フェニルトリメチレンホスフィンオキシド)(2)を与えることを明らかにし、さらに、それを市販ポリスチレン樹脂にグラフト重合させて、安定な含リン樹脂を調製した。 この含リン樹脂の構造的な特長はリン元素が分子鎖の中で等間隔に存在しており、従って、キレーション効果によって重金属イオンを吸着することが期待される。硫酸銅(【II】),塩化水銀(【II】),塩化パラジウム(【II】)および酢酸ウラニウムの水溶液について、含リン樹脂による吸脱着テストを行った。1×【10^(-4)】mol/Lの濃度の金属イオン水溶液1mLに含リン樹脂50mg(2.5×【10^(-4)】molのリン・ユニット)を加え、時々、振とうし72時間放置した。水溶液中の金属イオン濃度を吸光光度法で定量分析して吸着を調べた。3N H【NO_3】水溶液、pH1(HCl-KCl buffer),pH4(KH Phthalate-NaOH buffer),pH6(KH Phthalate-NaOH buffer),pH8(【H_3】B【O_3】-KCl-NaOH-【Na_2】【CO_3】 buffer)での吸着金属イオン%を測定した。この結果より銅(【II】)イオンについてはpH8で84%吸着され、3N H【NO_3】で処理することにより92%まで脱着される。水銀(【II】)イオンについてはpH1〜8で95〜100%吸着され、3N H【NO_3】で処理すると約40%まで脱着される。パラジウム(【II】)イオンについては3N H【NO_3】およびpH1で定量的に吸着され、0.1N 【NH_4】OHにより約40%脱着される。ウラン(【VI】)イオンについては3N H【NO_3】およびpH1〜6で92〜98%吸着され、10%【Na_2】【CO_3】水溶液により簡単に定量的に脱着する。以上の吸脱着実験は4回繰返してもその吸着機能の劣化は認められなかった。本研究で合成した含リンポリマーは有害重金属イオンの銅(【II】)や水銀(【II】)の吸着除去・濃縮、また、有用重金属イオンの吸着回収・濃縮に対しい望ましい機能を有することが明らかになった。
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